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羽化ズレの調整方法各種

KAZ.YOSHII

せっかく羽化したのにま♂はまだ幼虫!!

ペアで購入した幼虫。

この2頭が成虫になったら累代していこう!と意気込んだものの、♀のほうが

先に蛹に。そして羽化。

なんと♂はまだ蛹にもなっていない!!!

特に♂が大型に成長するような種もそうですが、♂の大型個体を作出しようと温度管理をするとそれぞれの羽化に数ヶ月のズレが生じることもあるのです。

これを羽化ズレと言います。

こうなってしまっては、他から別の♂を迎え入れるしかありません。

では、次に増種したときは、下記のような対策を打っていきましょう!

その1)温度変化で調整  

幼虫飼育時、♂♀の判別が出来るようになったら♂と♀の飼育環境の温度設定

差をつけるというやり方です。

簡単にいうと

♂を高めの温度の所に置き、♀を低めの所に置く

ということです。

管理温度に差をつけることによって、幼虫の成長曲線は変わってきます。

この方法を取ることで、高温の場所に置いた幼虫は早く成長し、低めの幼虫はじっくりと時間をかけて成長し羽化する傾向があります。

ヘラクレス♂ 25℃

ヘラクレス♀ 21℃

などメリハリを付けます。

※六脚堂のブリードルーム内の温度。(右側)下段の低い温度に♀のボトルを置き、上の段に♂を置きます。ちなみにブリードルームの外は、10月で15℃前後になります。

よく言われるのは、幼虫は桜の花などと同様に、「蓄積した温度量」で蛹になると。

※とはいえ、低温で飼育したからといって何年も幼虫でいることもありません。

   種や個体差で、エサを食べる温度帯と時間があるようです。この成長のスピードを利用することで、羽化時期を揃える方法です。

しかし!!これにはデメリットがあります。

♂は早く羽化してしまうことになるので、大きくなりにくいのです。。。あくまでも累代をしていくための♂を作るための方法です。

スペースの問題や抱えられる頭数に限りがある方、ペアの幼虫しかいない、などたくさんを抱えられない状況の際の対処法だと思います。

※たくさんの幼虫を抱えている場合、血統を残すために一部の♂は高めの温度で管理されているブリーダーさんも存在しています。

なお、自然科学観察コンクールで中学生がカブトムシの幼虫の積算温度に関する成長スピードの発表をしています。とても参考になるのでぜひ御覧ください。

こちらから。

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2023-10-23

羽化ズレ対策 その2

2)同じケースに♂♀を入れて多頭飼育する。

クワガタ、カブトムシの幼虫は、複数での多頭飼育の場合 近くの幼虫が蛹化の準備を始めると、それに反応して自分も蛹化の準備を始めるという説があります。

幼虫同士が「俺はここにいるぞ!」というノック音を出し、羽化を合わせていると言われています。

しかしながら、100%の方法ではありません。

うまくいく場合とうまく行かないことがあるのです。この理由については証拠を出すのは難しいのですが、youtubeなどでも成功している方の動画はたくさんありますので参考にすると良いでしょう。

「わたくわ」さんのyoutube

メタリフェル多頭飼育で羽化ズレは防げるのか検証してみた【クワガタ飼育】

また、大きな♂が出にくいのでこちらもブリードを続けることが前提の方法です。

参考にしてみてください。

ちなみに、こちらの写真はビルマニクスゴホンヅノカブトのペア。

ほぼ同じ時期に孵化しています。

それを、2令後期から多頭飼育してみましたところ。。。

♂のほうが先に蛹化し、♀は前蛹です!

サナギで 60mm程度なので、かなり小さめの♂なので、より♀よりも蛹化が早かったのかと思います。

少しだけ趣旨は違いますが、カブトムシ・クワガタの幼虫はコミュニケーションを取っているというエビデンスがあるのです。

こちらは東大の学位論文で、カブトムシの振動によるコミュニケーションについての論文要旨です。

http://gakui.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/gazo.cgi?no=129172

同じ方の論文。カブトムシの集合成メカニズム

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J02778/

お暇な時に読んでみてください。

2023-10-23

羽化ズレ対策 その3)採卵時期をずらす(孵化日の違う♂♀で用意する)

その3は、採卵時期をずらすという方法です。

六脚堂で意識しているのはこの方法になります。

種の寿命の長さや、割り出し方法(卵か幼虫か)にもよりますが、♀ちゃんに何度も卵を産んでもらう事が可能な場合、採卵に1〜2ヶ月のタイムラグを作ります。

このタイムラグの中から、更に孵化から蛹化までのタイミングの合う子にメボシをつけるのです。(産卵セットに入れ、ゼリー補給に上がってきたタイミングで引き上げ、2回目、ないし3回目にセットへ入れる時期に少し間を空けるということです)

※幼虫での割り出しでも同じことが言えます。

例えば。。

♂幼虫:3月に孵化 → 12月に羽化

♀幼虫:6月に孵化→12月に羽化

この♂と♀の羽化時期を合わせてかけ合わせます。

前述のように、同じ♀で3ヶ月の差をつけるのは寿命の関係で難しく、インラインブリードでは使いにくい方法かもしれません。しかし、どうしても累代したい!という場合は意識しても良い方法かと思います。

たくさん卵を取りたい!!と思いつつ何度もチャレンジしていると自ずとこの手法を取っていることも考えられますが、クワガタ・カブトムシの寿命は誰にもわかりません。

ペアリングも、産卵も、♀ちゃんにとっては命を掛けた生命の本能。もしも頑丈な♀ちゃんならうまくいくことでしょう!

幼虫を購入するときなどはこの孵化時期を意識するとしないのでは大きく変わりますので

覚えておいてください。

この3点で、羽化ズレを対策してみましょう!

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KAZ.YOSHII

映像・WEB・システム開発の会社「WILLPLANT」の代表取締役。

会社内で、幼虫飼育1000頭を行なっているカブクワおじさんでありつつ、ラジコンバギー(ストック)で2022年、全日本16位(JMRCA)。

カブクワバトル動画、カブトコロシアムの主宰でもある。

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