採卵した卵の管理方法
「産卵セットから採卵した卵の管理」
生まれた卵は100%で孵化させたいものです。しかしながら、孵化率が100%になることはとてもむずかしいものです
中には、ペアリングがうまく行かずに無精卵だった。
♂、♀、のコンディション(未成熟だった)が良くなかった。
採卵時に傷を付けてしまった。振動を与えてしまった。温度があっていなかった。
など理由は様々です。
しかし、彼らは言葉を発することができません。私達が、彼らへの愛を持って最高の環境と、技術、知識を手に入れていきましょう。
「卵の管理バリエーション」
1)マット管理
一番スタンダードな管理方法です。私もこの方法がメインです。
産卵セットから採卵する際に、プリンカップ、もしくは小ケースなどを用意しておきましょう。 その際には新しいマットではなくできれば産卵セットで使ったマットを使用します。
(ただしコバエが出てるものは避けましょう。)
乾燥しているときは霧吹きで乾燥しないようにケアしてください。
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マット管理にもバリエーションがあります。ちょっと見てみましょう。
1−A)マットにうめる
産卵セットの環境(卵室から出したあとの)に一番近くする方法です。
ケース、もしくはプリンカップに軽く窪みを付け、その中に卵を入れ、上から軽くマットを被せます。
幼虫だった場合も同様です。
卵(幼虫)の移動には細心の注意を払ってください。
私はこちらのピンセットを愛用しています。強く握ることなく移動が可能です。
移動後、上からマットをかけてください。
1-B)カップの脇に入れる
カップの脇で管理することで、孵化するところを確認することが可能です。孵化のタイミングが分かることで、このあとの菌糸への移動やマットの移動スケジュールをきめ細かく行うことが可能になります。
最大のメリットとしては、孵化する、しないを見ることができれば無精卵かどうかの判断を素早くできるのがメリットです。
また、見てない間に孵化して内側に幼虫が入っていく場合や、知らない間に溶けてしまうこも有ります。卵を見失わないように、写真のように印を付けておくと便利だったりします。
1ーC)濡れティッシュを被せる
くぼみにおいた卵の上にマットを掛けるのではなく、ティッシュをかける方法です。
どちらも「保湿」が目的ですが、マットをかけると孵化したかどうかが不明になるため、孵化日を正確にデータとして取ることができなくなってしまいます。
卵をセットしたら上からティッシュを置き、霧吹きをします。
なお、ティッシュも劣化しますので1週間位で交換していくのが理想です。
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2)ティッシュ(キッチンペーパー)管理
プリンカップにティッシュをひいて、霧吹きで乾燥しないように管理します。
マットには目に見えない雑菌も入っていると考え、よりリスクの少ない方法としてこの管理方法があります。
また大きなメリットとしては1)の手法よりもきれいな孵化したての幼虫が見えることでしょうか。デメリットは、孵化したときに食べるエサが無いため、数日見逃してしまうと☆になってしまうことです。
また、ティッシュが乾燥しないかどうかのチェックも必須となります。
水分は結構ひたひたで大丈夫です。
孵化したら24時間以内にはマットへ移動したいところです。
ティッシュの上で孵化した幼虫はギラファノコギリクワガタ。このあとすぐに、小さなプリンカップ(50cc)に移動しました。
3)産卵材での食痕管理
産卵材からの割り出しの場合、食い進んだものにバクテリアや親虫の唾液などに保存成分(?)が含まれており、卵にやさしいようです。
※通常はフタを閉じてください。写真の関係上フタを開けています。
※写真はタランドゥスオオツヤクワガタの卵。なんと緑色なのです。
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以上大きく3点に方法が分かれますが、どれが正解!ということはありません。
一番良いのは、♀ちゃんが卵を産んでそのまま孵化するまで産卵セットに入れておくこと。
この方法がリスクが一番少ないということ間違いありません。
しかし、飼育スペースが限られている場合や、数多くの卵を取りたいときなどは、産卵セットを割り出しする事になります。
《ダニは卵の天敵??》
生まれた(採卵した)卵をしっかりと管理しているつもりでも、すべての卵が幼虫になるわけではありません。これはマット管理でも、ティッシュ管理でも全てにおいて言えることです。
この卵の孵化率(ふかりつ)を下げてしまう原因に《ダニ》や雑虫が強く影響してしまいます。
ここに6個のタランドゥスの卵があります。
卵に付着している丸くて白い物体があります。よく目を凝らしてみてみると、ちょっとづつ動いている物体。これがダニです。
こちらも雑虫にやられた卵です。
きれいなうぐいす色の卵も、どんどんしぼんで黒い塊になってしまいます。
マットでの中で管理していても消えてなくなることがあるのですが、無精卵である場合も孵化せずにずっと卵のままだったり、溶けてなくなったりします。
ダニや雑虫はマットや産卵木、成虫の翅の中に潜んでいることもあります。残念ながら100%の解決方法は無いのです。
上のタランドゥスの卵は15個ほど採卵できたものの、♀の体に入たダニがまとわりついたと考えられ、産卵後にすでに卵に寄生しておりました。
この内2頭だけが残りましたが。。。
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♂♀ペアを手に入れたら、自分の手で累代(ブリード)していきたいですよね。
たくさん産んでもらった卵を、限りなく100%の孵化に近づけて行くために
勉強と経験を重ねていきましょう!!
最後に
ーーーーープリンカップには穴あけを忘れずに!ーーーーー
プリンカップで管理する際、注意点があります!
それは、、プリンカップは思った以上に気密性が高いため、空気が送り込まれず卵や幼虫が酸欠になってしまうのです。
そこで、プリンカップのフタには絶対に、針などで数カ所の穴を開けるようにしてください。
私は消しゴムに縫い物用のまち針を差し込み使いやすくしています。
(もっといい方法があると思いますが笑)
これで、5〜8箇所ほど穴を開けます。
カップを重ねたときに塞いでしまわないよう、縁の方に開けておくことがポイント。また、1mm以上の太い針穴だと、コバエが通れてしまいます。
細い針にしておきましょう。
※千枚通しなどを使う方もいますが、それだと穴が大きく(1mm以上)なり、マット管理の場合はコバエが入ります。
また、多くの穴を開けすぎると表面の乾燥が早くなってしまいますので開けすぎに注意です。
飼育環境によって乾きやすかったり湿気が溜まりやすかったり、これはその環境によるものが大きいので、たくさんの経験を積んで自分の飼育環境でのベストを探ってください。
「卵の温度管理について」
卵の管理方法に加え、大切になるのは温度管理です。
基本は産卵セットと同様の温度環境に置いておくことが理想です。ミヤマクワガタやホソアカクワガタ、ネプチューンオオカブト、サタンオオカブトなどの低温種なら17〜22℃で。その他産卵時に25℃程度で管理する種の場合は25℃で管理しましょう!
《意図せぬ放虫に注意!!》
ネブトクワガタやパプアキンイロクワガタなど小さな種は卵も小さく見逃しがちです。また孵化したての幼虫も見つけにくいものです。
産卵セットを割り出したあとの廃棄マットから、採卵ミス(見逃し)による卵や幼虫が入ったままになると放虫になってしまうので特に注意してください。
私は割り出し後、すぐにはマットを捨てずにケースに戻して更に1ヶ月様子を見たり、冷凍処理してから廃棄処分しています。これは今後、昆虫飼育界にも大きく影響することですので、是非ご注意ください!
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